Ankiでフラッシュカード作成効率化の鍵:ノートタイプ「基本」「穴埋め問題」「画像穴埋め問題」の違いを徹底解説
無料で使える最強のフラッシュカードアプリ「Anki」は、普通に利用する分にはシンプルながらも、上級者向けにはかなり細かいカスタマイズが可能です。
Ankiを使い続けていると、その多機能な中でも「ノートタイプ」という言葉が気になってくると思います。

Ankiで効率的にカードを作るには「ノートタイプ」が重要って聞いたけど、そもそもデッキ、ノート、カードの違いから分からない…
この記事では、理解すると効率的にカードを作成・管理できる「ノートタイプ」というキーワードと、それに関連する各種用語の解説を行います。
この記事の対象読者
- これからAnkiで自身の好みのデッキをカスタマイズしていきたい入門者
- Ankiの基本構造を深く学びたい方

台湾で「面倒解決エンジニア」として活動している森田ユウゴです!
私は台湾在住のソフトウェアエンジニアです。「面倒くさい!」を原動力に、kintoneカスタマイズやChrome拡張機能開発などを通して、日常や業務の課題をテクノロジーで解決することに注力しています。
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Ankiを理解する最重要概念:「データベース」としてのAnki
多くのAnki初心者がAnkiを「デジタル単語帳」と捉えますが、実はAnkiの本質は「個人用の学習データベース」なのです。
この「データベース」という考え方に基づき、Ankiの各種用語の違いを理解することが、Ankiのポテンシャルを最大限に引き出すための第一歩となります。
このデータベースは、大きく下記の4つのキーワードに分解できます。
- デッキ (Deck)
- ノート (Note)
- フィールド (Field)
- カード (Card)
「デッキ (Deck)」とは何か?:カードが入った箱

最も大きい単位を「コレクション」と呼びます。たまに操作をしていると出てくるキーワードなので余裕があったら覚えておくと便利です。
「デッキ (Deck)」とは、様々なカード(問題)が入った「箱」や「フォルダ」のようなものです。これは普段Ankiを利用していると目にするため、イメージ通りという方も多いと思います。
「ノート」「フィールド」「カード」とは何か?:最も違いが分かりづらい概念
一番理解が難しいのが、残りの「ノート」「フィールド」「カード」の関係性です。

| 項目 | 説明 |
|---|---|
| ノート (Note) とは? | 「ノート」とは、フィールド(項目名)に入力された「情報のひとまとまり(データ)」です。 例えば、「日本語」フィールドに「りんご」、「英語」フィールドに「Apple」と入力した、この1セットが1つの「ノート」です。 |
| フィールド (Field) とは? | 「フィールド」とは、情報を入力する「項目名」のことです。Ankiの標準的なカード追加画面にある「Front」と「Back」という入力部分が、まさにフィールドです。これはデータベースでいう「列の名前」(例:「日本語」「英語」「発音記号」)に相当します。 |
| カード (Card) とは? | 「カード」とは、その「ノート(情報セット)」を基に生成される、私たちが実際に学習する「問題(フラッシュカード)」のことです。 このカードは「ノートタイプ」に紐づいた「カードテンプレート」をもとに作成されます。 |
しかし、Ankiの真価は、1つの「ノート」から複数の「カード」を自動生成できる点にあります。
例:1つのノートから3枚のカードを作る
例として、先ほど例に挙げた英単語の「りんご」に関するノートを、具体的に考えてみましょう。
1. ノートタイプでフィールド(項目名)を定義する まず、英単語ノートでは下記の3つの「フィールド」を管理するとします。
- 日本語
- 英語
- 英英(英語による説明)
2. ノートを入力する 決めたフィールドに、具体的な情報を入力します。これが1つの「ノート」です。
| フィールド名 | 内容(ノート) |
|---|---|
| 日本語 | りんご |
| 英語 | Apple |
| 英英 | a hard round fruit that has red, light green, or yellow skin and is white inside |
3. カードテンプレート(問題の設計図)を作成する この1つのノート(情報セット)を使って、異なる角度から出題する「カード」を3種類作成します。
カードタイプ1(日→英)
- 表: 日本語フィールドの内容(りんご)
- 裏: 英語フィールド(Apple) + 英英フィールド(a hard round fruit…)
カードタイプ2(英→日)
- 表: 英語フィールドの内容(Apple)
- 裏: 日本語フィールド(りんご) + 英英フィールド(a hard round fruit…)
カードタイプ3(英英→英)
- 表: 英英フィールドの内容(a hard round fruit…)
- 裏: 英語フィールド(Apple) + 日本語フィールド(りんご)
このように、「ノート」はあくまでデータであり、「カード」はそれをどういう形式で出題するかという「問題(ビュー)」である、という関係性を理解することが最も重要です。
ここまでのカードを視覚的に分かりやすくしたのが下記のサンプルです。
りんご
りんご
Apple
a hard round fruit that has red, light green, or yellow skin and is white inside
Apple
Apple
りんご
a hard round fruit that has red, light green, or yellow skin and is white inside
What English word do you associate with the following English word?
a hard round fruit that has red, light green, or yellow skin and is white inside
It’s a …
What English word do you associate with the following English word?
a hard round fruit that has red, light green, or yellow skin and is white inside
It’s a … Apple
Anki標準ノートタイプ(全3種)の完全ガイド
ここまでの概念を理解した上で、Ankiが標準で提供している3つの主要なノートタイプについて解説します。
まずは、3つのノートタイプの特徴を一覧で比較します。
| ノートタイプ名 | デフォルトフィールド | 標準で生成されるカード | 主な用途(学習シナリオ) |
|---|---|---|---|
| 基本 (Basic) | 表面, 裏面 | 1ノートにつき1枚(Front→Back) | 単純な一問一答(単語、用語、簡単な事実など) |
| 穴埋め問題 (Cloze) | Text, 裏面追記 | 1ノートから複数枚({{c1::…}}, {{c2::…}}の数だけ) | 文章の穴埋め、用語の定義、リストの記憶など |
| 画像穴埋め問題 (Image Occlusion) | 穴埋め箇所, 画像, ヘッダー, 裏面追記, コメント | 1画像から複数枚(マスクの数だけ) | 解剖図、地図、図表、ダイアグラムの暗記 |
以降では日本語表示を前提に、主に日本語ユーザーインターフェースの用語で記載します。
1. ノートタイプ「基本」とその派生
「基本」は、その名の通り最もシンプルで汎用的なノートタイプです。
デフォルトで「表面」フィールドと「裏面」フィールドという2つのフィールドを持ち、入力された情報から1枚のカード(表面→裏面)を生成します。
ステップバイステップ作成方法
お好みのデッキで「追加」を押して下記の通り進めます。
左上にある「タイプ」と書かれたボタンをクリックし、リストから「基本」が選択されていることを確認します。

下記を参考にフィールドに値を入力します。
- 「表面」フィールドに例として「りんご」を入力します。
- 「裏面」フィールドに例として「Apple」を入力します。
右下にある「追加」ボタンをクリックします。

ノートタイプ「基本」は、おそらく直感的に追加できたのではないでしょうか。
「基本」の関連タイプ
ノートタイプ「基本」はその名の通り、フラッシュカードの基本となるテンプレートです。
Ankiでは標準で基本をベースとした次のようなノートタイプが用意されています。
関連タイプ1:基本(裏表反転カード付き)このノートタイプも「表面」と「裏面」フィールドを持ちますが、「基本」とは異なり、1つのノートを追加するとAnkiが自動的に2枚のカードを生成します。
- カード1: 表面 → 裏面 (例:「りんご」→「Apple」)
- カード2: 裏面 → 表面 (例:「Apple」→「りんご」)
これは、語学学習などで双方向の想起を練習したい場合に非常に便利です。
関連タイプ2:基本(裏表反転カード追加可能) これは、Ankiのカスタマイズ機能への「第一歩」とも言える、非常に重要な概念を含むノートタイプです。
このタイプには、「表面」「裏面」に加えて、「任意の入力で反転カード追加」という3つ目のフィールドが用意されています。 この「任意の入力で反転カード追加」フィールドは、情報を表示するためのものではありません。これは「フラグ(目印)」として機能します。
Ankiはノートを追加する際、「もしこの『任意の入力で反転カード追加』フィールドに何らかのテキスト(一文字でも可)が入力されていたら、裏表反転カード(裏面→表面)も追加で作成する」という条件分岐を行います。
もし空欄のままなら、通常の「基本」タイプと同じく、Front→Backの1枚のカードしか作成されません。
これにより、ユーザーはノートごとに「反転カードが必要か否か」を選択できるようになります。
英語学習の例では「英→日」は比較的一方通行でざっくり理解ができても、日→英は(「借りる」にborrow, rentなど複数の訳があるように)一対一で対応しないケースがあります。
英→日
「borrow」→「借りる」
日→英
「借りる」→「borrow ?」「rent ?」「use ?」
あくまで例です。「borrowは”取り入れる”という意味もあるからカードの作り方が悪いじゃないか!!」という点は見逃してください。
そこで「任意の入力で反転カード追加」に「日英カード作成」など適当な値を入力した場合のみ、日→英カードを作成することができます。
2. ノートタイプ「穴埋め問題(Cloze)」について
「穴埋め問題 (Cloze)」は、文章中の一つ(または複数)の単語を隠す「穴埋め問題」を作成するための、Ankiが特別に扱うノートタイプです。
テキストベースの「穴埋め問題」とも言えます。
「穴埋め問題(Cloze)」の基本的な使い方
必須構文 穴埋め問題の作成には、Anki固有の特別な構文が必要です。
複雑な使い方はこの記事では省略し、最低限の使い方をご紹介します。
左上にある「ノートタイプ」で「基本」となっている場合、「基本」をクリックします。その後、「ノートタイプを選択してください」というウィンドウが表示されたら「穴埋め問題」を選択します。

ノートタイプ「基本」だった部分が「穴埋め問題」になっていればOKです。
Textフィールドに例として下記の英文と日本語文を入力します。
The government plans to implement a new tax system next year.
政府は来年、新しい税制を実施する計画だ。

穴埋めの追加は、ノートタイプ「穴埋め」の時に表示される専用のボタンをクリックすることで追加可能です。
(穴埋めの追加)ボタンが2つ(例: […]と[…+])ありますが、標準のボタン([…])を押すと{{c1::}}、{{c2::}}…のように別々のカードになる穴埋めが作られます。もう一方のボタン([…+])を押すと、{{c1::}}、{{c1::}}…のように同じカードで同時に表示される穴埋めが作られます。

穴埋めのボタンを押すと、最初はどちらのボタンを押しても「{{c1::~内容~}}」という風にタグが追加されます。

この「{{c1::}}」こそが「穴埋め」を示す文字列です。
慣れてきたら直接キーボードで、{{c1::}}と入力しても同じように穴埋めを作ることができます。
標準の穴埋めボタン([…])をクリックすると、{{c1::}}がすでにあれば{{c2::}}、{{c2::}}がすでにあれば{{c3::}}と、自動で連番が振られます。
このcはCardの略で、c1~c3はそれぞれカード1~カード3を作るという意味になります。
注意点:ノートタイプ「基本」では穴埋めを作れない!

今まで使ってきたノートタイプ「基本」で穴埋めを追加したい!
Ankiを使っていくと必ず出てくる考えだと思います。
残念ながら穴埋めを使うにはノートタイプ「穴埋め問題」をベースとしたノートである必要があります。
これは、{{c…}}という構文が、カードテンプレートレベルの単純な機能ではなく、Ankiのプログラム本体に組み込まれた特殊な仕組みで処理されるためです。
したがって、もし「穴埋め問題」を使ったノートにカスタマイズをしたい場合は、必ず「ノートタイプの管理」画面で「ノートタイプを追加」する際に、「追加: 穴埋め問題」もしくは「クローン: 穴埋め問題」を選択しなければなりません。
3. ノートタイプ「画像穴埋め問題(Image Occlusion)」について
「画像穴埋め問題 (Image Occlusion)」は、Anki 23.10以降で標準搭載された強力なノートタイプです。
解剖図、地図、回路図、歴史の年表など、画像上の特定の部分(ラベルなど)を隠し、それを推測させるための機能です。「穴埋め問題」の画像版と言えます。

例えば下記の画像をもとに、英単語をまとめて覚えようとしているとします。

この画像の英単語部分を穴埋めにするのが「画像穴埋め問題(Image Occlusion)」です。画像穴埋めにも細かい設定はありますが、今回はシンプルに入門編として手順をご紹介します。
「画像穴埋め問題(Image Occlusion)」の基本的な使い方
左上にある「ノートタイプ」を「画像穴埋め問題」に変更します。
ノートタイプ「画像穴埋め問題」の場合、標準では下記のように画像を選択する画面が表示されます。お好みの方法で画像を選択します。

画像穴埋めは専用のエディタ画面で行います。
左の四角いアイコンを選択した状態で、画像の上でクリックしてドラッグします。

下記のように標準で黄色い四角が追加されたら成功です。

一度に複数の画像穴埋めを作れますし、直感的にわかる通り「丸」の形で穴埋めを作ることもできます。
追加は他のカードと同様に「追加」をクリックするだけです。
注意点:ノートタイプ「基本」では画像穴埋めも作れない!
文字の穴埋めと同様、画像穴埋めも「基本」や「穴埋め」のノートタイプでは作成することができません。
なぜ「ノートタイプ」をカスタマイズするのか?
ここまで標準でAnkiが提供しているノートタイプ「基本(Basic)」、「穴埋め(Cloze)」、「画像穴埋め(Image Occlusion」をご紹介してきました。
ここからはノートタイプを「カスタマイズ」する必要性についてご紹介します。
初心者が陥る罠:「裏面」フィールドへの情報の詰め込みすぎ
Anki入門者がノートを作成する際、最もよくある失敗例が「基本」ノートタイプの「裏面」フィールドに、関連するすべての情報を詰め込んでしまうことです。
例えば、英単語 “ubiquitous” を覚えるために、「裏面」フィールドに以下のように入力してしまうケースです。
「至る所にある、遍在する」
[音声ファイル]
juːˈbɪkwɪtəs
(例文) The company’s logo is ubiquitous.
分類:formal word
この方法は、学習初期の数十個のカードでは問題ありません。しかし、カードがどんどん増えていくと、この「情報の詰め込み」が深刻な問題を引き起こします。
例えば100個の単語をノートとして上記のように追加したあと、「裏面はシンプルに意味と発音記号と音声だけにしたい!」となった場合どうする必要があるでしょうか。100個すべてのノートを手作業で開き、いらない例文と分類を一つひとつ消していく必要があります。
それだけならまだ良いですが、あとから「やっぱり例文も欲しい…」となった場合、再度裏面に追加が必要になってしまいます。
つまりフィールドに情報が集まりすぎていると、柔軟性に欠けたカードになってしまうのです。
情報を「フィールド」に分割する3つの絶大なメリット
この問題を解決し、Ankiを「単なる単語帳」から「強力な個人データベース」へと昇華させる行為が、ノートタイプのカスタマイズ(=フィールドの分割)です。
先の例を、以下のように専用フィールドを持つカスタムノートタイプに分割して保存し直すことを考えます。
- 単語フィールド: ubiquitous
- 意味フィールド: 至る所にある、遍在する
- 発音記号フィールド: /juːˈbɪkwɪtəs/
- 音声フィールド: (音声ファイル)
- 例文フィールド: The company’s logo is ubiquitous.
- 補足フィールド: formal word

このようにフィールドを分割することには、3つの絶大なメリットがあります。
1. 情報の構造化(入力と編集の効率化) 情報が「意味」「例文」「補足」のように構造化されているため、入力が体系化されます。
最大の利点は編集時です。もし「例文が不適切だったので修正したい」と思った時、「基本」タイプでは「裏面」フィールドに詰め込まれたテキストの山から該当箇所を探し出す必要があります。カスタムタイプなら、「例文」フィールドだけをピンポイントで修正すれば完了です。
2. 検索性の飛躍的な向上(ブラウザ機能の最大化) Ankiには、コレクション全体を検索・管理するための「ブラウザ」機能が搭載されています。フィールドが分割されていると、このブラウザ機能の真価が発揮されます。
例えば、「例文フィールドに ubiquitous という単語が含まれているノートをすべて検索する」といった、高度な検索が可能になります。あるいは、「補足フィールドが空欄ではないノート」(=何らかの補足メモがあるノート)だけを検索することもできます。
「裏面」フィールドにすべてが混在している状態では、このような柔軟なデータ検索と管理は不可能です。
3. カード表示の柔軟性(テンプレート編集の前提条件) これがカスタマイズの最大の目的です。フィールドが分割されていれば、「カードテンプレート」を編集し、カードの表示を自在に制御できます。
- 「意味」フィールドは大きく太字で表示する。
- 「例文」フィールドは小さくイタリック体で表示する。
- 「音声」フィールドの音声は、解答表示時に自動再生する。
- 「補足」フィールドは、クリックするまで表示しない(ヒントのように扱う)。

このような、学習効率を最大化するためのデザイン制御は、「基本」ノートタイプのままでは実現不可能です。これがAnkiをカスタマイズする最大の理由です。
Ankiの熟練ユーザーは、学習の「想起の質」だけでなく、この「コレクションの長期的な管理性・検索性・再利用性」を重視し、さらには見た目でも学習効率を高めるカードを作成するために、ノートタイプを積極的にカスタマイズするのです。
まとめとAnkiカスタマイズのご相談
この記事では、Ankiの学習効率の根幹をなす「ノートタイプ」について、その概念からノートタイプをカスタマイズする理由までご紹介しました。
情報をフィールドに分割し「構造化」することこそが、Ankiの真価である「多角的なカード」を生成するために不可欠な第一歩となります。
これらの機能を使って実際にTOEICを200点(採点不可)レベルからTOEIC550点までもっていくのにAnkiを使った「面倒解決エンジニア」である私、森田ユウゴは、ココナラでAnkiのお悩み相談や、デッキのカスタマイズを承っています。
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