Ankiで「画像穴埋め(Image Occlusion)」完全ガイド:標準機能 vs. 最強アドオン、初心者が選ぶべきはどっち?
学習において、文字を読むだけよりも写真や画像を使った方が効率的に進められることがあります。これは「画像優位性効果」として知られており、人間はテキストよりも視覚情報をはるかに効率的に記憶しやすい傾向があります。
この効果をAnkiで最大限に活用する学習法が「画像穴埋め(Image Occlusion)」です。
解剖学の図、歴史の地図、複雑な図解など、画像の一部を隠して思い出すことで、記憶を強力に定着させることができます。
長年、この機能は「Image Occlusion Enhanced (IOE)」という伝説的なアドオンによって支えられてきました。しかし、2023年11月にリリースされたAnki 23.10で、ついにこの画像穴埋めがAnkiの「標準機能」として正式に統合されました。
これにより、多くのAnkiユーザー、特に初心者は新たなジレンマに直面することになりました。

最初から入っている標準機能と、多くのブログやYoutubeの口コミでオススメされているアドオン、結局どっちを使えばいいの?

結論から言えば、99%のユーザー、特にこれから始める入門者の方は、迷わず「標準機能」を選ぶべきです。
なぜそう言い切れるのか、そして、逆にアドオンを選ぶべきなのはどんな人なのか。その明確な理由を、ステップバイステップで解説していきます。
この記事の対象読者
- Ankiで「画像穴埋め」をしようとして情報過多に陥っている方
- 「標準機能」と「アドオン(Image Occlusion Enhanced)」どちらが良いか悩んでいる方

台湾で「面倒解決エンジニア」として活動している森田ユウゴです!
私は台湾在住のソフトウェアエンジニアです。「面倒くさい!」を原動力に、kintoneカスタマイズやChrome拡張機能開発などを通して、日常や業務の課題をテクノロジーで解決することに注力しています。
ご相談はこちらから▼
第1章:二つのツールの物語 – 「競争」ではなく「進化」
標準機能とアドオンは、「競合するツール」と捉えられがちですが、その歴史を紐解くと、実は「競争」ではなく「進化」の物語が浮かび上がります。
Image Occlusion Enhancedの歴史
物語の始まりは、アドオン「Image Occlusion Enhanced(以下、IOEアドオン)」でした。開発者Tiago Barroso氏によって生み出され、2016年にGlutanimateが引き継ぎました。IOEアドオンは、特に医学部生など、視覚的な暗記を大量に行うユーザーにとって不可欠な「必須アドオン」としての地位を確立しました。
日本語訳:Image Occlusion は、Anki アドオン作成者の伝説的人物であるTiago Barrosoの独創的な作品で、2016 年初頭に私が開発を引き継ぎました。それ以来、約15 万回ダウンロードされており、Image Occlusion Enhanced はこれまでで最も人気のあるアドオンです。
Glutanimate: Projects – https://glutanimate.com/projects/
この絶大な支持と有用性を受け、Ankiの公式開発チームは、この機能を「Image Occlusion」として、2023年11月リリースのAnki 23.10に標準搭載しました。
ここで最も重要な事実は、IOEアドオンの開発者であるGlutanimate氏自身が、この標準Image Occlusion機能の開発にも深く関わっていた※という点です。
※参考:https://forums.ankiweb.net/t/image-occlusion-ui-ux-suggestions/23176
【参考】日々の使い勝手:UI/UXの比較
日々のカード作成の使い勝手は、両者の設計思想の違いを明確に映し出しています。
最も手軽に追加できる「クリップボードから作成」という場面において比較をしてみます。
標準Image Occlusionのスムーズな統合体験

標準Image Occlusionでのカード作成は、驚くほど直感的です。
- カード追加画面でノートタイプを「Image Occlusion」に切り替えます。
- 表示されたエリアに画像をドラッグ&ドロップします。
- そのままAnkiのノート追加ウィンドウ内で、マスクを追加できます。
別のウィンドウが立ち上がることはなく、UIもAnki本体と統一されています。画像穴埋めが「特別な機能」ではなく、テキスト入力と同じくらい自然な「基本機能」の一つとして扱われていることがわかります。
IOEアドオンのパワフルだが分離したワークフロー

一方、IOEアドオンは異なるアプローチを取ります。
- ノートタイプを「Image Occlusion Enhanced」に設定します。
- 専用のボタンをクリックすると、Anki本体とは完全に独立した、新しい編集ウィンドウがポップアップ表示されます。
このエディタは非常に多機能で、レイヤー機能やフリーハンド描画など、プロ向けのツールを備えています。しかし、この多機能さは諸刃の剣です。初心者にとっては選択肢が多すぎて圧倒される可能性があり、作業の流れもAnki本体と編集ウィンドウの行き来で分断されがちです。
第2章:標準Image OcclusionとIOEアドオンの決定的な違い – なぜ初心者は標準機能を選ぶべきか
歴史的背景よりも、知りたいのは「結局どっちが良いのか」だと思いますが、結論は冒頭に述べた通り「標準Image Occlusion」だと私は考えています。
ここでは、技術的な違いをもとに比較していきます。
1. データ保存形式:軽量なテキスト vs. 肥大化する画像ファイル
1つ目の違いは「データ保存形式」です。

- 標準Image Occlusion: マスクの情報を「テキスト形式の座標データ」としてノートのフィールド内に保存します。これは非常に軽量で、Ankiのデータベースを圧迫しません。
- IOEアドオン: 穴埋めカードを1枚作るたびに、マスク情報を含んだ新しいSVG画像ファイルを生成し、Ankiのメディアフォルダに保存します。10個のマスクを作れば、10個のSVGファイルが追加されます。
IOEアドオンの方式では、知らず知らずのうちにメディアフォルダが肥大化して、「同期が遅い…」の原因にもなり得ます。
2. カード構造:賢い「兄弟カード」 vs. 独立した「ノート」
2つ目の違いは「カード構造」です。

- 標準Image Occlusion: 一枚の画像に3つのマスクを作ると、「一つのノート」から「三つのカード」が生成されます。Ankiはこれらを「兄弟カード(Siblings)」として認識し、同じ学習セッションで連続して出題されるのを防ぎます。
- IOEアドオン: 同じ状況で、マスク一つひとつに対して独立した「三つのノート」を作成します。これらは互いに無関係なノートとして扱われるため、Ankiの兄弟カード(Siblings)機能が働かず、レビューセッションで立て続けに出題されて学習効率が下がる可能性があります。
3. モバイル対応:どこでも編集ができるか
最後の3つ目は、最も重要な違いかもしれない「モバイル対応」の可否です。

- 標準Image Occlusion: 標準Image Occlusionで作ったカードは、公式モバイルアプリ(AnkiMobile/AnkiDroid)で新規作成・編集が完結します。エディタ機能がアプリにネイティブに組み込まれています。
- IOEアドオン: モバイルでカードをレビュー(学習)することはできますが、編集や新規作成は一切できません。簡単な修正もPC版Ankiでしか行えません。
これらの技術的な差異を総合すると、標準Image Occlusionの内部設計が一般利用者にとっては優れていると言えます。
第3章:「IOEアドオン」の真価 – アドオンがオススメな人とは?

では、IOEアドオンはもう不要なのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。
IOEアドオンが支持され続け、現在も多くの方に使われているのには明確な理由があります。それは、標準Image Occlusionにはない、特定の高度な要求に応える専門的な機能があるからです。
1. レイヤーの力:「マスク」と「ラベル」
IOEアドオンの真髄はレイヤーシステムにあります。
- マスク (Masks) レイヤー: ここに配置した図形は、それぞれが新しいカード(問題)になります。
- ラベル (Labels) レイヤー: ここに配置した図形は、カードを生成しません。その代わり、同じ画像から生成されるすべてのカードにおいて、常に隠された状態になります。
例えば、解剖図の隅に答えが一覧になった「凡例」が載っている場合。IOEアドオンなら、覚えたい部位を「マスクレイヤー」で、答えのヒントになる凡例を「ラベルレイヤー」で隠すことができます。これにより、答えのヒントを排除しつつ、問いたい部分だけをテストする、という高度な教材作成が可能です。
2. 高度なエディタとカスタマイズ性
IOEアドオンのエディタは、スポイトツールで図形のスタイルをコピーしたり、注釈としてのテキストや矢印を描画したりできます。また、上級ユーザーやエンジニアはスクリプトを挿入し、「クリックするたびに一つずつマスクが表示される」といった独自のレビュー挙動を実装することも可能です。
このように「標準Image Occlusionにはない柔軟さ・多機能性」が、今でも多くの上級ユーザーに愛されている所以です。
結論 – あなたが選ぶべき機能はコレだ
これまでの分析を、一つの表にまとめます。
| 機能・側面 | Anki 標準 Image Occlusion | Image Occlusion Enhanced (アドオン) |
| 初心者推奨度 | ★★★★★ (強く推奨) | ★★☆☆☆ (上級者向け) |
| UI/エディタ | Ankiノート追加画面に統合 (シームレス) | 独立したポップアップウィンドウ (高機能だが複雑) |
| データ保存形式 | 軽量なテキスト(座標データ) | 肥大化するSVG画像ファイル |
| カード構造 | 兄弟カード(1ノート→複数カード)で学習効率◎ | 独立ノート(1マスク→1ノート)で管理が煩雑 |
| モバイル対応 (スマホ対応) | スマホで編集・新規作成が可能 | スマホは閲覧のみ (編集・作成は不可) |
| 高度な機能 | 基本機能に特化 | レイヤー機能、スクリプト対応などプロ向け |
| 将来性 | Anki本体と共に継続的に更新・サポート(主流) | 開発は緩やか(アドオン依存) |

繰り返しとなりますが、入門者は「標準機能」を選ぶべきです。
99%のユーザー、特にAnki入門者の方は、迷うことなく、Ankiに標準搭載されている「Image Occlusion(標準機能)」を選んでください。
これは、単に「簡単だから」という理由だけではありません。標準Image Occlusionは、より効率的なデータ管理、Ankiの学習アルゴリズムとの深い連携、完全なモバイル対応、そしてAnki開発の未来との整合性という、長期的な視点から見て圧倒的な利点を持っています。

でも標準機能だとやりたいことができない…。

そんなあなたには、ココナラで提供しているサービス「AnkiやAnkiDroidのご相談にのります」がおすすめです!
さいごに
AnkiやAnkiDroidのご相談にのります
ITが苦手でも大丈夫。記憶の定着を加速させます
あなたの「もっとこうしたい!」を形にするお手伝いができれば幸いです。
お見積もりやご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
スキルプラットフォーム「ココナラ」では、Ankiのカスタマイズを私「森田ユウゴ」に依頼ができます!
ご相談はこちらから▼
森田ユウゴさんのプロフィール | ココナラ
Ankiユーザーでもあり、「面倒解決エンジニア」の私にご依頼をお待ちしております!

